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大野地球科学研究会は化石やお天気または星が好きな仲間が造った同好会です。
大野地球科学研究会
SINCE: 2001年1月1日
UPDATE: 2016年10月8日
第6章 豪雪の被害と除雪公害 村田守男
自然界の他の多くの小物体と同じように雪は結晶としてみれば非常に美しく、これが強大な破壊力の要素となるとはとても思えない。 雪が驚異利害、恐怖などの対象となるのは大量の発生した時である。今年の豪雪の被害と、それに伴っての除雪公害ともいえる被害もあわせて写真で示しながら、 道路、家屋、自然、農業関係と分けてみてみた。
(1) 道路関係
積雪でまず不便を強いられるのが道路の不通である。今年、大野市や和泉村は一時陸の孤島とまでなった。 このような中で人々は昔ながらに背中に荷物を背負い、ひたすら生活、仕事をこなした。車社会の脆弱性をしみじみと味わった。 また、北陸本線を始め、県内各地の鉄道も除雪が追いつかず、一時は全線不通になった。越美北線の不通も41日間続いた。
? 懸命の除雪作業も降りしきる雪には
為すすべも無く細々とした 除雪作業に見えた。
S56.1.5 大野市春日
(1月中旬にはすべて除雪作業というよりも
排雪作業に変わった)
? ふりしきる雪と屋根からの雪で道路は
埋めつくされ二階の高さまで達した。
S56.1.5 大野市春日
▼ 雪の止み間に行われた除雪作業
(行政の除雪作業もお手上げ、各地で民間業者に
委託して 除雪作業が行われた)
? 大野・福井間の大動脈158号線は越美北線の不通がつついていることもあって特に力を入れて除雪された。
特に一番のネック花山峠は入念な除雪がなされた。
写真の左は積雪時、右は春になって同地点を撮影したものである。
春になってみると雪の壁が数メートルもあったあの豪雪がなつかしい。
S56.1.27
大野市花山峠
? 参画広い道路幅もやっと2車線であった。
? 除雪された雪が道路の両脇に高く積み上げられ
道路は車道・歩道の区別なく人も車もノロノロの
状態であった。
S56.1 福井市駅前
? 道路沿いに駐車してあった自家用車は大量の雪に
うもれ、道路の除雪された雪をもらって春まで
身動きできず、雪解けとともに無残な姿が各地に
多数現れた。
S56. 足羽郡美山町R158
? 次々と除雪しなければならない道路では両側に
向かって押すような形で除雪がつづけられ、
ガードレールも少しづつ外に向けて押され、
ついには路肩までも亀裂がはいり、 春になって
各地で無残な姿で現れた。
S56.5.3 大野市南新在家
? S56.5.4 大野市下打波 ▲ S56.5.3 大野市南新在家
除雪車にひっかけられたり押されてきた雪の圧力で石垣やコンクリートの路肩が崩れた。
? 大量の積雪のためその重量と締まりの力によって
太いガードレールも曲げられてしまった。
写真は大野−中島間の道路で、冬期間は通行止に
なっているために除雪によるガードレールの破損が
加わらなかったのは幸いであるかもしれない。
S56.5.4 大野市若生子
? 山間部の山際に建てられた電柱はことごとく
写真のような折れ方をしていた。
おそらく下図のようなメカニズムによって折れた
ものと考えられる。 大野市中島
? 山の斜面によくみられる雪崩防止の柵だが、
今冬の豪雪ではあまり効果がなかったようである。
S56.5.4 大野市下打波
? 電柱が曲げられたり杉の木が折られた光景は
56豪雪を物語る代表的なものである。
S56.2 鯖江市中野町
?▲ 幹線道路や交差点など、除排雪車の往来の激しかった
場所では道路に穴やへこみができたり排水溝やマンホールの
破損が見られた。
S56.3.25 勝山市元町
? 横型信号機はその「つば」に積もった雪の重さの為に各地で
ことごとく目玉が飛び出したようになった。
S56.1.25 和泉村朝日
▼ 縦型信号機に変えられた交差点。
S56.8 大野市東中
▲ これでも国道か?除雪車の前も横も雪の壁。
前の見渡せない除雪とは!道路標識に注意。
S56.1 大野郡和泉村
積雪の重みで釣橋が落ちてしまった。?
S56.1 和泉村下山
?▼ 下の写真では2つのスノーセットが見られるが、この2つの
間にも同じ続きのスノーセットがあった。これが左の写真で
見るように雪崩等の雪の重みでつぶれてしまった。その間
春先まで臨時的に水の少ない河原が道路として使用された。
S56.1. S56.6. 和泉村板倉
? 放置された自電車が雪にうずもれ、つぶされた。
雪解けとともに無残な姿が現れたのはここだけ
ではない。
S56.2 福井市駅前
? 突然の大雪で、路上に放置され雪にうずもれたままの
車が多かった。そのため車体がゆがみ、へこみ、
窓ガラスの割れ、塗装のはがれ等がでた。
除雪車に傷つけられたり、ブルトーザーが走った下に
車があり、車がペシャンコになったという笑うに
笑えない話もある。
S56.2 敦賀市
? 国鉄九頭竜湖駅も雪にうもれてごらんのとおり。
プラットフォームだけはどうにか除雪されたが
当分汽車が来る予定はなかった。
S56.1.25 和泉村朝日
? 国鉄九頭竜湖駅の線路を除雪するにもラッセル車は
役に立たず、まずは道路除雪用のブルドーザーや
ロータリー除雪車が必要であった。
S56.2.3 和泉村朝日
? 越美北線の大野市勝原・和泉村板倉間(トンネル部分
がほとんど)をモーターカーを走らせて和泉村村民の
唯一の交通手段となった。
S56.1.25 和泉村板倉
▼ モーターカーの受け入れの為板倉地区の
除雪に協力している村民。
S56.1.18 和泉村板倉
▼ 雪の晴れ間を見計らって救援物資を
運ぶ航空自衛隊のヘリ。
S56.1.9 和泉村朝日
(2) 家屋関係
56豪雪のすごさの一端を示すものに家屋の倒壊がある。特に冬期間は無人状態になるような山間部の倒壊が目立った。 また、ひさし、雨どい、窓ガラス等の破損は各家庭で1か所はあると言っても言い過ぎでないほど見られた。家の中にあっては障子がきしみ湿気が逃げ切らないなどの現象があった。 その他、屋外のポロパンガス管が屋根雪を落とした時の衝撃や融雪時の力ではずれ、ガス漏れ、ガス爆発や火災等のいたましい事故があった。
?▲ 冬期間無人状態になった山間部の家屋はことごとく
雪の重みで倒壊した。しかし、頑固な造りの
土蔵だけはこの豪雪にたえた。
S56. 大野市上打波
? 雪囲いがこわれ、建物の内部まで雪が侵入した。
こんな風景はめずらしくなかった。
S55.12.30 和泉村朝日
? 雪降しというよりも家をほじくり出していると言った
ほうがふさわしい風景である。
S56.1 和泉村朝日
?▼ 家屋の被害で一番多かったものは写真のように、
ひさしやげやの部分が破損したことである。
S56.5.7 大野市上打波
? 56豪雪で家屋の被害の特徴の一つに屋根の陥没があった。
S56.2 福井市
?▼ 公園の遊具が雪の重みでつぶされたり曲げられたり
した。春になってもそのまま放置され、子供たちは
寂しい思いをしたのではないだろうか。
S56.8 大野市神明公園
? 今年は豪雪の復旧工事や雪害防止工事が各地で
ひんぱんに行われている。
S56.11.14 大野市大和町
? 自転車置き場のテントがバランスをくずして
一方に重みがかかり曲げられた
S56.2.28 大野市月見町
(3) 自然関係
56豪雪の被害を端的に示すものに全国にも放映された杉の倒木がある。原因はいろいろ考えられる(5章参照)。
▼ 表層雪崩による杉の木(直径10〜20p位)の折木、幅5m、長さ30m位であった。
雪崩のすざましさを現している。 S56.5 和泉村貝皿
(横) (正面)
? ことごとく杉の木が折れて空が明るくなった。
山の持ち主も手のつけようがない状態であった。
S56.2 福井市天神付近
▼ 豊富な雪解け水の為、応急的に
ダムの放水が行われた。
S56.6 大野市真名川ダム
▼ じょうぶな松の木も
ごらんの通り。
S56.6 大野市
?▼ 山間部では例年になく表層雪崩や底雪崩、
土砂崩れが多発した。そのため道路や山林に
多大の被害を与えた。
大野郡和泉村 大野市下打波
?▼ 砂防ダムのコンクリートの「そで」が表層雪崩の風圧で
吹き飛ばされた。雪崩の隠された破壊力を見せつけられた。
S56.5.21 大野市下打波
(4) 農業関係
冬の間農業は休業ということもあって大きな被害は少なかったが、ハウスの倒壊や雪捨て場となった田畑には土砂、ゴミ、油かすがたまった。 また、全般的に雪解けが遅かったのと春になっても水が冷たかったため田植えが2週間程度遅れたり春野菜の出来が悪かった。
? ハウスの倒壊現場。
S56.6 福井市成願寺
?▼ 雪の捨て場となった県庁のお堀、
一時は10数メートルの高さにも達した。
大きな雪の山が作られ、日本全国にテレビでも
紹介された今冬の豪雪の象徴。
S56.1 福井県庁
? 県庁のお堀の雪が解けるにつれて出てきたゴミが
数トンにもなったとか、この雪は6月ごろまで残った。
S56.5.21 福井県庁
? この下に我が家があるなんて信じられますか。
S56.1 大野市下打波
▼ ようやく道路は除雪されたが、どこの家も
一階はすっぽり雪にうまり、当分自動車を
出せる状態にはならなかった。 大野市
? 大量の雪の為鉄筋コンクリートの建物でさえ
雪降しがなされた。
S56.1 大野市月見町
・まとめ・
このように見てくると豪雪の被害は多方面にわたっていることがわかる。半面いろんな意味での多方面の日頃の雪への備えが忘れられていたための被害もあるように思われる。 今まであげてきた事例がこれからの備えに対する例証となれば幸いである。
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