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大野地球科学研究会は化石やお天気または星が好きな仲間が造った同好会です。

SINCE:  2001年1月1日

UPDATE: 2016年10月8日


 第4章 豪雪と地下水  村田守男


今冬の降雪は昭和38年以来の豪雪と言われ、社会生活、自然に多大且つ深刻な影響を与えた。 この中で大野市の地下水がこの豪雪でどのような変化を受けたかを調べてみた。

大野盆地の地形
 大野盆地は南側に高く北側に低いほぼ不等辺5角形の形を示し、東西・南北の幅員は約9q内外である。この盆地は日本のいたるところで見られると同じ陥没盆地で、 陥没後、九頭竜川、真名川、清滝川等の河川によって土砂が堆積され、盆地内に幾層かの透水層、不透水層を形成した。その結果、上流で浸透した水が地下水となり、 下流域では比較的浅い井戸を掘れば良質の地下水が得られるようになっている。したがって大野盆地は地下水が豊富であると言われている。ただ、盆地一様な透水層、不透水層でなく、 層の長さや深さ、厚さ幅が異なる為地域によって地下水の水位は異なっている。

地下水の変化
 今冬の豪雪が地下水に及ぼした影響を見るため、大野市の簡易観測井のうち下記の3地点(大清水・春日公園・駅東)の昨年度(昭和54年12月から昭和55年6月まで) と今年度(昭和55年12月から昭和56年6月まで)の地下水の水位の変化をグラフにした。
 グラフで縦軸の下へくる程地下水の水位が低くなり、井戸枯れの心配がでてくる。また、水位の0mとは観測井戸の地表面より50cm上にとっている。 これは地表面を0にすると水位が読み取りにくく、地下水の自噴の可能性も考慮に入れた為である。 また、「大野盆地の地形」のところでのべたようなことからグラフ上における地下水の水位の数値は同一観測井戸の相対的な比較ができるだけであり、 他の井戸との絶対的な水位の比較はできない。  また、大野盆地の地下水の年間を通しての変化はおよそ次のようになる。3月から5月にかけて雪解け水により水位が上がってきて、さらに田の冠水が大きく作用して大きく上昇し、 7月から9月の間高い推移を保つ、その後田の冠水がなくなり、稲刈りが始まる頃から水位が急激に下がり始め、市内の一部の井戸枯れが問題になり始める。 さらに12月から2月の間、積雪と低温のため地下への水の浸透が減り、最も低い水位となり、また春を迎える。  以上の点を考慮に入れてグラフから幾つかの気づいた点を列記してみよう。

(1) 全体的にみると大清水は今年、昨年でほとんど変化がない、しかし、十数年前までは吹き上げるほどの湧水があったことを思うと、 いかに雪解け水が多かったと言えどもそのような状態にならなかったのは残念である。

(2) 駅東・春日公園においては、12月下旬を除いて3月初旬まで今年度の水位が昨年度より低い。この点をとらえて豪雪の影響が出ていると一概には言えない。 確かに、積雪の為表流水の浸透が少なく、融雪水の使用も多量で水位が下がったとも言えるが、 工業用水・生活用水等の社会的要因や降水量等の自然的要因が複雑にからみ合っているいるので、これだけでは断定できないと思われる。 ただ、12月下旬に水位が上昇している。これはその前のみぞれや初雪等が解け地下に浸透したため水位が上昇したと考えられる。 そしてその後の大雪で再び水位が下がったものと思われる。 3月中旬になると急水位が上昇し、昨年より大巾に上昇している。これは明らかに雪解け水によるものである。 そして豪雪による雪解け水が多かった為、水位が昨年並みに戻るのはやっと6月に入ってからである。雪のある間地上ではさんざん痛めつけられたが、 地下水に関してはおもわぬ福となった。 地下水に見る限り、豪雪の影響は6月まで続いたことになる。

(3) 3月に入ると昨年、今年を問わず、水位が急激に上昇してくる。これは雪解け水が出てくる為であるが、いかに今年が豪雪であろうと、同時期ごろに上昇を始めている。 春は雪の多少にかかわらず確実にやってくることがわかる。自然界のリズムを感じさせる。

(4) 以上のことを56豪雪状況グラフ(第3章)と対比させながらもっと詳しく見てみよう。12月に入ってからの雪が13日から15日に解けて水位が上昇し、 その後、みぞれや雪が降り、27日からの大雪で下降し始めている。 1月に入り3日から8日にかけてと10日から15日にかけての雪で化工を示し、4日からの最高気温零度前後という低温と相まって全体的に低水位となっている。 2月に入って13日から気温が上昇し、雪も解けはじめ、水位が上昇しはじめるが、25日からの寒波による積雪と氷点下の温度で再び下降した。 2月末から3月にかけての積雪のピークとそれ以後の積雪の下降は水位の上昇となって表れ、この現象は積雪が0pとなる4月9日まで続き、積雪0pになった日が水位の最高の日となっている。 ちなみに去年の降雪状況を調べてみると次の様になる。 1月に降ったユニはだんだん解けはじめ、1月31日から2月4日にかけて新たに降雪があった。 グラフでも1月31日にピークの山がみられる。その後2月16日に最大積雪量170pを記録して解ける一方となり、3月28日に積雪0pとなった。 積雪0pになった日が水位の最高とはなっていないが、大体その傾向は読みとれるように思う。 以上のように雪と地下水位は積雪と低温で低水位になるというかなりの相関関係があるように思える。

(5) 今年の水位記録のグラフ線のうち年末から1月中旬まで抜けているところがある。突然の大雪があった時期である。雪に追われる毎日で記録どころではなかったのであろう。 なんとも人間味が出て豪雪の一端を見る思いがする。

 以上のように地下水位をみてくると、自然環境に大きく左右されることが良くわかる。これに現在では人間社会の要求は地下水に多大の負担をかけている。 井戸枯れや地盤沈下がおこる前に自然資源は有限であるということを肝に銘じて節水等の社会的ルールを確立したいものである。

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