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大野地球科学研究会は化石やお天気または星が好きな仲間が造った同好会です。

SINCE:  2001年1月1日

UPDATE: 2016年10月8日


 第3章 雪層の研究  前田裕一


次から次へと積もる雪は、その雪の性質やまわりの環境、降雪時の気象状況をとらえながら地層のように積もり下部は圧縮される。 そのために断面を切ってみると非常におもしろい結果をとらえている。この56豪雪も下記の2地点で断面を調べてみた。
     観測T ・・・ 観測地 大野市美里町   有終東小学校校庭
     観測U ・・・ 観測地 大野郡和泉村朝日 和泉村民グラウンド

観測Tについて
     観測地  大野市美里町 有終東小学校校庭
     観測日時 昭和56年1月18日 14時〜17時
     天候   くもり一時晴

観測地Tの断面写真とスケッチとその日までの降雪データを図にすると下記のようになる。また同時に豪雪の状況知っていただくために初雪から積雪が0になるまでの期間の新雪量、 積雪量、新雪累計、天候、最高気温をグラフにしてみた。また、38年の豪雪との比較もおもしろいと思われたのでそれらを一枚のグラフにしてみた。
積雪の断層写真の撮影は直径約5mの穴を雪面を上から掘ってその一部分、巾約1.5mをスコップできれいにけずりとり、断層面を見やすくするために青インクを霧吹きでかけたものである。

まずスケッチを見ていただこう。点々の部分は氷晶質の雪でできており、いわゆる雪えくぼである。雪えくぼができるメカニズムは明らかではないが、降雪や寒波が緩んだ1月1日、 9日にできていることがわかる。
12月27日〜31日の5日間には横線の細かい層の部分がほとんど無い。これは、この期間とめどどもなくしんしんと雪が降り続いたことを意味していると同時に日中も日がささず、 降った雪がゆるまなかったことがわかる。また一日の降雪量として12月29日には115cmも降り過去にない降雪となってだれもが悲鳴をあげた。この降雪がゆるんだのが正月1日で、 2日の少量の降雨によって雪がしまり、上層に氷晶質の雪の層ができ、雪えくぼを作ったものと考えられる。
さらに次の強い寒波が1月3日〜8日の6日間で、前回の寒波よりも少しは弱いものであった。層の状態からして日中は一時的に陽がさしたことがうかがわれるとはいえ、 この間にも230cmの新雪(累計)が降っているのだから強烈な寒波であった。(ここでいう寒波の強さは寒気団全体の強さではなく、観測地が受けた寒波の強さをいっている。)
その寒波も1月9日にはゆるんで降雨があったために前回と同じように氷晶質の雪をつくり、雪えくぼもつくった。

大野盆地のなりたちイメージ
その後再び1月10日から降雪となり1月17日まで続く。しかしこの間の寒波は前回や前々回のような降り方ではなく、日中は陽のさす時間もあったらしくきれいに細かい層ができている。
観測日の1月18日はくもりで寒波もゆるんで、16、17日と24cmの新雪があったにもかかわらず15日の269cmよりも30数cm積雪がへっている。 これ以後以前のような強烈な寒波が幸いにしてやってこなかったため、最高積雪は15日の269cm(新雪累計837cm)に終わり、 以後わずかづつ降った降雪も3月16日の6cmを最後に新雪累計1096cmに終わった。ちなみに積雪が0cmになったのが4月9日であった。 大野盆地のなりたちイメージ

次に降雪量等を考えると、観測日1月18日の積雪状態で平地面の1uあたり約800kg(1坪約2.64t)の重量がかかっていることになる。したがって株の雪は上部の雪によって事前に圧縮され密になっている。事実当日穴をほるのに下部はスコップでもなかなか掘りおこせないくらい固くなっていた。 そこで降雪の自然圧縮について考えてみると、次のようなおもしろい結果が出てきた。

   当日の積雪cm × 3.3 ≒ 降雪量mm(積雪を水に換算したときの量)

例えば
   S56 1月1日  積雪175cm×3.3=577mm
           降水量観測値累計(S55.12.14〜S56.1.1):560mm
   S56 1月9日  積雪205cm×3.3=676mm
           降水量観測値累計(S55.12.21〜S56.1.9):653mm
   S56 1月18日 積雪232cm×3.3=765mm
           降水量観測値累計(S55.12.26〜S56.1.18):792mm
一方積雪断面図から
   1月1日の面から上を計算すると  雪層(1.1〜1.18)150cm×3.3=495mm
                    降雪量累計(1.1〜1.18)477mm
   1月19日の面から上を計算すると  雪層(1.9〜1.18)82cm×3.3=270mm
                    降雪量累計(1.9〜1.18)266mm
という結果になる。
すまわち、積雪cmの約30分の1がその時の積雪を水に換算した時の量である。(ただし、積雪が3m程度までに言えることで5mくらいになるとそうとも言えないかもしれない。)
   ex 積雪1mに達した時には
           100×3.3=330mm となり
     1uあたり約33kg(坪109kg)の重量がかかっていることになる。

観測Uについて
     観測地  大野郡和泉村朝日 和泉村民グラウンド
     観測日時 昭和56年1月25日 10時〜11時30分
     天候   くもり時々晴

観測Tと同様上記観測地の断面写真とスケッチ等を図にした。
また、初雪の12月4日から1月26日までの新雪量、積雪量、新雪累計、天候をグラフにしてみた。

まずスケッチを見ていただこう。観測地Uでは雪えくぼは見られなかった。これは、観測Tの大野市とちがって泉村では気温が低く、 雪えくぼができるような状態にならなかったと思われる。
12月13日から12月26日に降った雪は氷晶質の雪を含んで約35cm(新雪累計184cm)となっているが、同期間の大野では約8cm(新雪累計105cm)となっており、 いかに和泉村の方が初雪のころから降雪量が多かったかがうかがえ、同時に気温が低いこともあって溶けにくいこともうかがえる。
12月27日から31日には観測地Tと同様細かい層の部分がほとんど無い。そして、1日の降雪量として12月29日には125cmも降り、翌日30日には積雪が350cmにも達した。 12月中に350cmもの積雪に達したのは過去に例の無いことではないだろうか。

大野盆地のなりたちイメージ
この降雪が正月1日に一時的にゆるみ、つづく1月3日〜8日の6日間でも細かい雪の部分がほとんど無いことから、とめどもなくしんしんと雪が降ったようである。
その寒波も1月9日にはゆるんで表面に氷晶質の雪をつくった。

大野盆地のなりたちイメージ

その後再び1月10日から降雪となるが、観測日の1月25日までの間の寒波は、前回や前々回のような降り方ではなく、 日中には陽のさす次官も会ったらしいことが細かいそうによってうかがえる。特に寒波がゆるんだ大野市での観測日1月18日のくもりの時の線が上から約20cmのところに見られる。
これ以後幸いに以前のような強烈な寒波がやってこなかったため最高積雪は1月18日の385cmに終わった。しかし積雪が0cmになったのは4月20日で平年よりも相当におくれた。

次に先ほど積雪cm×3.3≒降雪量mm(積雪を水に換算したときの量)の式を使うと
   1月25日  積雪258cm×3.3=851mm となり、
平地面の1uあたり約850kg(1坪あたり2.8t)の重量がかかっていたことになる。

このように積雪の断面図は地層と同じ様にその日々の降雪の量や環境状態を明確に残していくいわば天候の化石みたいなものである。 また、つぎつぎと積もる雪は下層の雪を圧縮してゆき、積雪cm×3.3≒降雪量mm(積雪を水に換算したときの量)となるのは興味深い。 (ただしこの式は降雪が続いている間では使用できるが、途中に大量の雨が降ったり、もっぱら積雪がとける一方の場合は使えないと思われる。 また積雪が5m位にもなるとこの式は利用できないかもしれない。今後の研究課題となった。)

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