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大野地球科学研究会は化石やお天気または星が好きな仲間が造った同好会です。

SINCE:  2001年1月1日

UPDATE: 2016年10月8日


 第2章 積雪の性質  清水 悟


積雪にはさまざまな性質がある。一般的な性質には、粘着力(付着力)、重量、しまり、および体積がある。 「56豪雪」としてマスコミで騒がれ人間社会に影響をおよぼしたのは 主にこれら4つの雪の性質によるものである。 ただし、いろんな現象はひとつの性質だけによるものはほとんどなく、大なり小なりいろんな性質がからみあっている。 これらの性質が今年の冬において実際にどのような自然現象を引き起こしたのかを調査し、写真におさめてみた。

粘着力(付着力)
気温が比較的高い時に降る雪は湿気の多い雪になる。このような雪は、含まれる水分(湿気)の影響により、雪どうしがくっつきあったり、物に付着する性質を持つ。 これを粘着力という。雪国としては南部にあたる福井県地方には粘着力の強い雪が降ることが多い。反対に湿気の少ない雪はサラサラとした雪となり、 いわゆる粉雪とよばれるものになる。この雪は粘着力が弱いので手につかんで固く握っても雪玉とならず、サラサラとした元の雪にもどってしまう。

重 量
雪は重さを持っており、昭和56年1月6日大野市において約2.3mの積雪があり、雪の平均比重は0.24であった。そうすると、このときには地表面上1uあたり約552kgの重量が あったことになり、100uの家では55.2t(トン)もの重量が家屋全体を押さえつけていたことになる。比較的気温の高い時に降る雪は水分を多く含み、 多くの雪の結晶がひとつの塊となって落下するもので「ボタン雪」などとよばれている。そのような雪はその含まれる水分が原因となって粘着力を有すると同時に重い雪となる。

しまり
「しまり」とは積もった雪が固くしまった雪になる性質のことである。このことは雪自身の重みのほか、さらに上に積もった雪の重みで下に向かって圧縮されることによりおきる。 このしまりの性質が無かったならば。降った雪の量の合計(新雪累計)が積雪量とほぼ一致するはずであるが、そうはならない。そして、当然のことながら下部にある雪ほど固さが増し、 スコップが容易につきささらないほどに固くなることもある。

体 積
雪の体積というとどうもピンとこないのだが、積雪となった場合には「雪の嵩がある」と言われ、地表にじゃまになるものとして存在する。人の住んでいない所や田畑に積雪があっても、 それは春になって自然に解けて無くなるのを待てばよい。しかし、道端等、人間が活動する屋外に積雪があると、その重量とあいまって、人も自動車もその活動を妨害される。

大野盆地のなりたちイメージ
屋根に積もった雪が屋根の斜面をすべってずってきたが雪どうしに粘着量があり、容易にはすべり落ちず垂れ下がりながらつながっている状態の写真である。 しかし、やがて垂れ下がった雪の重みの方が大きくなって落ちるはずである。
           S56.1.14 大野市美川町

大野盆地のなりたちイメージ
雪が樹木の上に積もったり木の枝に付着するのは粘着力の働きによる。雪に粘着力がない場合には雪は木の枝にくっつかないでサラサラと下に落ちてしまう。 写真では樹木をささえている垂直に立てた木の片方だけに雪がくっついている。これは風による横なぐりの雪が一方方向から吹きつけたために木の片方だけに雪が付着した状態である。
           S56.1.17 金沢市兼六園

大野盆地のなりたちイメージ
除雪車で垂直に切った雪層が日々に雪の無い道路にせり出してきた、いわゆるせり出し現象である。これは雪の粘着力と重量としまりの性質による。
           S56.1.25 大野市大月

大野盆地のなりたちイメージ
雪の重量は建物においては無視できない。ゆえに、早めに屋根雪おろしをしないと建物がつぶれたり、こわれたりする。56豪雪では写真のように 直径50cmもある柱が折れて建物全体が倒壊したところも見られた。これは主に雪の重量の性質による。
           S56.2.10 大野市上打波

大野盆地のなりたちイメージ
昭和56年1月25日の積雪量は約2.5mであった。(大野市和泉村朝日)当地の雪の降り始めから当日までの毎日の降雪量を加算すると約10m少々になるが、 しまりの性質によってそれが約4分の1にしまったわけである。
                S56.1.25 大野市和泉村朝日
                      村民グラウンド

大野盆地のなりたちイメージ
積雪がしまってくると粘着力の性質と上部の重量によって、下部に向かって大きな力が働き、写真のように太いガードレールまでも曲げてしまう。 雪が解けてから各地で見られた光景である。
           S56.4.28 大野市中津川

大野盆地のなりたちイメージ
積雪は水の4倍の体積を有している。そのため積もった雪は溶かさない限り体積も減らず、流れることもないために所かまわず埋めつくしてしまう。 住宅密集地の道路では雪の捨場が無いためと、除雪がスムーズに行われず、道路も完全に埋まってしまう。
           S56.1.10 大野市春日町

大野盆地のなりたちイメージ
俵雪
木の枝等から落ちた雪が斜面を転がり落ちながら雪だるま式に大きくなって米俵のような形になったもの。人頭大よりも大きくなることもあり、 大量に転がり落ちて災害を引きおこす事もある。地方によってはこの現象を「アワ」ともよんでいる。
           S56.3.  和泉村大谷

大野盆地のなりたちイメージ
雪えくぼ
雪が解ける時には一様に解け出すのではなく、ところどころにくぼみをつくりながら解ける。このメカニズムについては明らかではないが、地表面の影響や、そのときの積雪の状態によって雪の表面にくぼみとその下に水路(みずみち)をつくって解けると考えられている。。
           S56.1.30 福井市

大野盆地のなりたちイメージ
水路
雪えくぼと同じような現象であるが、斜面にできたために、雪の表面化の水路(みずみち)が斜面にそって長く伸びたために雪の表面も斜面にそってくぼんだ。
           S56.1. 30 福井市

大野盆地のなりたちイメージ 大野盆地のなりたちイメージ
つららと水道のつらら
冷えた朝にはつららが各地で見られる時がある。解けた雪や水道の水が寒さのために再び凍りついてしまったもの。

その他の現象には「樹氷」

その他の性質としては、言うまでもないと思うが、「白くて、冷たく、一粒一粒を観察すると結晶している」ということも忘れてはならない。

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