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大野地球科学研究会は化石やお天気または星が好きな仲間が造った同好会です。

SINCE:  2001年1月1日

UPDATE: 2016年10月8日


大 野 地 方 特 有 の 天 気 俚 諺

 ここでは大野地方に特有の天気の諺をいくつかみていくことにし、合わせて福井県に主にみられるものもみてみます。
 大野地方特有の諺の内容を調べてみると、荒島岳・経ヶ岳・飯降山が使われ地方色を表わしています。予想している天気については、 全国的に通用する諺を言い換えているものが見られます。大野市街から見た場合、東西南北の方向のかわりに、 東方は荒島岳、北方は経ヶ岳、西方は飯降山を使用しているようです。また大野は盆地地形であるため、 気象現象がかなり複雑になっていることが考えられます。盆地は、気温については一般に夏は日中が蒸し暑く、 冬は非常に寒いという特徴があり、さらに風向などもかなり影響されるようです。 京都・奈良などの盆地がその例で、大野も例外ではありません。

『荒島岳(1,523m)方向に雲がいくと晴れ』
 全国的な諺の『煙が西へなびくと雨、東へなびくと晴れ』と同類のものと言えます。低気圧の接近に伴う雲の動きを言ったもので、 大野で見た場合の一般的な雲の動きは、低気圧の接近、通過につれて、経ケ岳方向→飯降山方向→荒島岳方向と雲がいくわけです。 荒島岳方向に雲が流れるようになれば低気圧は去ったとみていいわけで、今後天気の回復が期待できます。 大阪地方で言われている『雲が天王寺参りをすると天気良くなる』も同じような諺で、天王寺は大阪市街から見ると、 ちょうど大野市街から荒島岳を見たのと同じような位置にあります。
 注: 雲の流れは、低気圧が日本海側を通るか、太平洋側を通るかによって多少変わります。

『経ヶ岳(1,625m)方向に雲が流れると雨』
 前述の諺の説明でもわかるように、経ヶ岳方向に雲が流れるときは低気圧の接近を示しているわけです。 風としては南寄りの風が吹いているわけで、全国的な諺の『南風は雨、北風は晴れ』と同類のものといえます。

『荒島岳の頂上に雲がかかると晴れ』
 全国的な諺の『高い山に笠雲がかかると雨』と相い反している諺です。しかし、この諺が間違っているというわけでもないようです。 荒島岳の頂上に雲が生じるのは主に雨が降ったあとに多く、このとき荒島岳に雲を発生させる大気は、低気圧が去ったあとの湿った空気で、 荒島岳方向に流れて山膚を吹き上がり、雲を生じさせていると考えられます。 低気圧が接近している時は経ヶ岳方向に湿った空気が流れるわけで、経ヶ岳に雲が生じると考えられます。 荒島岳頂上の雲は低気圧が去ったことを示しており天気の回復が期待できます。

『荒島岳の中復に雲がかかると雨』
『飯降山がはちまきをすると雨』
 不安定な大気が山膚に沿って上昇していくと、温度が下がり膨張して雲を生じます。 このとき低気圧が接近していて上空に暖気が入り気温の逆転(音に関する諺の項参照)が起っていると、 冷却して生じた雲は上層の温度が高いため消えてしまいます。このため山の一部に輪になったようた雲が見られることがあります。 暖気の侵入は低気圧の接近を示しており、次第に天気がくずれてきて雨となることが予想できます。 同じ内容のもので『富士山が帯を結ぶと雨』というのが静岡県地方で、また熊本県では『温泉腰巻、阿蘇頭巾は雨』と言われており、 温泉岳の裾を雲がまくときと阿蘇山に笠雲がかかると雨、というのがあります。

『飯降山の頂上に3回雪が降ると根雪になる』
 飯降山は標高884メートルのあまり高くない山です。この頂上が何度も雪におおわれれば、 その回をますごとに冬型の気圧配置が強くなってきているといえます。山頂だけの雪がしだいに低いところまで降るようになり、 この諺の「3回」という回数は、たんなる目安として考えたほうがいいようです。大野市街にも雪が降るようになれば、 それだけ寒気が強くなった証拠でいよいよ根雪の時期になるとみることができます。 高田(新潟県)では『妙高山に3度、南葉山に1度雪がくれば、次に里にもくる』と全く同じような諺が見られます。

『宝慶寺の雨は間もなくやってくる』
 言葉の表現はいろいろありますが、主に阪谷地区で言われています。阪谷から見た宝慶寺地区はほぼ南西方向にあり、 天気の変化が西から東に移っていくことと大体一致します。低気圧が太平洋側を通過するときには、大野では厳密に言うと西からというより、 南西方向からの天気のくずれが見られるのが主なようです。 この確率はかなりいいようで、局地的降雨の場合をのぞけばほぼ当るとみることができます。

◎その他  『西の空か明るいと晴れ』
      『大門山に雲がかかると雨』
      『ミソサザイ(サンダイ:チッチとも呼ばれる鳥)が来ると雪が降る』
      『フキアゲカゼが吹くと翌日は天気になる』(和泉村地区)
      『山うるしが色づくと 60日目に雪が降る』(和泉村地区)

 次に主に福井県下を中心として用いられている諺をあげてみます。全国的に通用するものとしても利用できますが、 風向や雪に関するものは、ある程度場所が限られます。

『東雷は雨降らず』
 雨を降らす低気圧は、普通西から東へと移動していきます。雷雲もこれと同様で、雷が東の方向から聞こえてくるときは、 その雷雲が東方に去ったとみることができます。雨を降らせる雲も同様に去ったとみることができ、雨の心配はないと予想できます。

『アイの風は雨、北風は晴れ』
 アイの風は、春や夏に日本海側に主に吹く風の古称で、福井では南風を示しています。 この諺は全国的な諺の『南風は雨、北風は晴れ』と全く同じものです。アイの風については、地方によってその風向がまちまちで、 山陰地方では東北東風のことを示しているようです。

『ハチの巣が高い所にあれば大雪』
 動植物が先の天候を予想する能力があるとは考えられません。この諺のハチも同じです。しかし、この予想ははずれてもいないようです。 秋に大陸の高気圧が早く発達して、日本をおおった場合、天気はよくなり夜間の地表付近の気温が非常に下がることが考えられます。 このため、ハチが比較的暖かいある程度地面から離れた高い所に巣を作るようになります。秋の頃から大陸高気圧の発達がみられる年は、 冬にも高気圧の発達が考えられ、冬型気圧配置が強まることが予測できます。したがって、そのような年は、 概して雪が多くなるとみることができます。

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