さ い ご に
化石を採ったり地層を調べたりして何が面白いのか、何か役に立つことでもあるのかと聞かれることがあります。
私たちは奥越の山々を美しいと思って眺めるだけでなく、山の成り立ちを考えたり、あの大きな山の地下深くにはどんな地層や化石が眠っているのかを
想像しながら研究をしています。
こうした研究を通じて大野盆地の成り立ちを知ることで、人間も含めた生き物のちっぽけさと、自然の偉大なことがわかってきました。あんなに繁栄を
誇った恐竜でさえ完全に滅び去り、山あいの草深い地層の中にひっそりと眠るのみです。
一方、現在隆盛を極める人類の歴史は、六千万年もの間繁栄した恐竜に比べるとはるかに短いものです。
人類はこれから将来、恐竜以上に長い繁栄が約束されているわけではありません。生物学的に考えると、人類は気の遠くなるほど長い生命の連鎖のなかの 小さな小さな一部分にすぎません。マラソンに例えれば遠い遠い過去から引き継がれたバトンを、未来へと引き継いでいく走者の一人なのです。
自然保護か開発かの議論があちこちで見受けられますが、どちらにしても、人間は大自然のなかでしか生きていくことができません。
私たちには豊かな自然を子孫に引き継ぐ使命があると思うのです。
こんな事を考えながら故郷の大自然に向き合うと、ふだんと違った楽しみがあり、愛する大野盆地をより深く理解できるのではないでしょうか。