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大野地球科学研究会は化石やお天気または星が好きな仲間が造った同好会です。

SINCE:  2001年1月1日

UPDATE: 2018年12月9日



第1回(第19号:1982年2月6日)

 雲は大気の流れが可視化されたものである。流れは空間に無限の広がりをもち、時間によって変化するものである。
 秋の青空の中に巻雲や絹積雲が帯状に西から東に走るのを見たことがあると思うが、あの雲はジェット気流が 10000m以上の上空に流れていることを示すものである。そしてその雲の長さはえんえんと3000kmにもなることがある。
 雪を降らす積雲は日本海側に集中しているが大陸からの季節風は日本列島を横切り太平洋へと絶えまなく吹きわたっている。 一定した大気の流れの中に積雲という形が残されたのである。
 また夏の空にそびえるような積乱雲は、空気の対流による現象であり、雲頂は12000mに達するものがあり直径は10000m くらいのものであることからみると実に大きな塊であることが分かる。しかし雲は大気の流れの一部に残された形であり、 雲の輪郭だけが大気の流れではなく雲頂の金とこ状の巻雲の端からさらに流れは続き水蒸気をすっかり吐き出した乾いた空気は 遠くかなたへ飛散し他の空気と同化する。一方雲底の方では湿った空気が熱せられて上昇し、 露点温度に達する高さまで上昇して初めて雲という形になり、それでも更に対流は続き雲は発達していくのである。

第2回(第27号:1982年9月11日)

 天気のしくみを知るためには大気の流れをマクロの目で見なければならないということについて紹介します。
 梅雨はどうして現れるかということは、北の冷気団と南の暖気団とが接する所で暖気が冷気の上に乗り上げて対流が起き 雨雲が発達して雨を降らせるということはすでにご存じのことと思います。しかしこれだけではなぜ空梅雨があったり梅雨の時期に 大雨が降ったりするのかについての説明ができません。一番大きな原因は偏西風にあるのです。なぜ偏西風というものがあるかに ついては別の機会に譲ることにして、この偏西風は必ず一定方向・一定の速さで吹くものではありませんから、 平素見聞きする天気予報にいう高気圧・低気圧の位置だけでは雨が降ることすらも予報できないのが現状であり、 偏西風がどのような状態であるかを見ることが必要なのです。
 どんよりとした雨雲の隙間に青空が見えることがありますが、その時よく目を凝らして見ますと雨雲の流れとは全く違う方向に 巻雲がはるか高空に流れていることがあります。すべての巻雲がそうではありませんが梅雨期の雨雲の上空の巻雲は だいたい偏西風があることを示しており、巻雲の流れる方向が速度によって冷気団・暖気団がどのように移動し雨雲がどのように 成長するのかが分かるのです。
 夏季には上空1万数千メートルに偏西風主流があり偏西風を象徴する巻雲が見られるわけですが、 私たちの上空には狭い視野内でさえも大気の流れは1つではなく高度0メートルから天気に影響を及ぼす対流圏の範囲内の 1万数千メートルまでの間にはいくつもの複雑な流れがあり、とりわけ偏西風が天気に大きな作用をしているのです。 偏西風は西から吹くことも北から吹くことも南からさえも吹きますし、無風の時もあるのです。

第3回(第30号:1983年5月1日)

 冬型の気圧配置の時気象衛星ひまわりの写真を見ますと、日本海の西端から日本列島に向かって筋状の雲の列が見えます。 解説ではその雲が日本列島にぶつかって雪を降らせるといっていますが、雲が雪を降らせるのではなくて、 熱対流によって雲は発生しますがその対流現象の中で雲は生成されるのです。この対流というのは、 温かい水蒸気を多く含んだ空気が季節風が運んできた冷たい空気の上に押し上げられて熱対流が生じる現象なのです。 そしてそれは、暖気と寒気との温度差が大きい程、また水蒸気が豊富に供給される程持続するので、 対流はだんだん大きく成長しながら季節風に流されて列を作りながら日本列島をめがけてやってくるのです。 雲列の両端では直径が何10mか何100mかの小さな対流にすぎませんが、日本列島沿岸での雲の大きさはふつう直径10数キロメートル 雲長高度4000mくらいまでのもので、対流もそれくらいの規模であり、これでようやく雪を降らせるような大きさになったわけです。 そして季節風は日本列島の摩擦によって上方向への流れが強化されますので、対流がますます増強されるとともに、 雪雲も大きく成長し、シンシンと雪の降る状態になるのです。この雪雲のほとんどは日本列島を貫く山脈を超えることができず、 太平洋側へ季節風が抜けた時は水蒸気の供給もなく対流は生じないので晴天に寒風が吹きすさぶ状態となり、 太平洋に出て初めて水蒸気が供給されまた対流が生じ雲もできます。 しかしこのころには季節風も弱まりまた対流を増強する陸もないのでそんなに発達はできず、日本海側区域とは異なった性質の雲になります。
 ところでいわゆる大雪はどのようにして降るのでしょうか。強い寒気が来ているときには雪雲を作る対流が列を作ってやってきますので、 ある1つの地域について見れば後から後から水蒸気が供給され十分に大きな雲頂高度が5000m〜6000mという雪雲を作るくらいの 対流が定着するからです。さらに日本海域では特殊な直径100kmくらいの小規模の渦列(これは低気圧と呼べないくらいのものである) が生じて、ある1つの地域について見ればその渦が後から後からやってきて水蒸気がどんどん供給され超一流の対流を作り大雪を作らせるのです。


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